私の作曲がはじめてNHKの電波にのったのが昭和27年で、全日本合唱連盟が主催する合唱コンクールの課題曲の募集に応募し当選して放送されたのですが、その頃ひばり児童合唱団のピアノ伴奏などのお手伝いをしたことがあります。私が慶應大学の2年生の時でした。
ひばり児童合唱団の誕生が、それから更に10年前ということは太平洋戦争の真っ只中で、やがて日本の都会は空襲で焼け野原になってしまいましたが、当時うたうことのできる歌は今とは違い国の圧力下でかなり制限されていたはずです。
終戦後は解放されて、その制限はなくなり、どん底の時代ではあったけれども放送やレコードを通してうたったひばり児童合唱団の歌声が、どれだけ日本の人々の心の活力のもとになったかわかりません。その後、ひばりからは多くの優れたアーティストが巣立っていきました。皆川先生の池に投げた一石が、限りなく大きな輪に広がっていくようすを見ることができます。
BMGレコードで、私のいままでの放送番組のテーマ音楽集が企画されました。その最後に「青い地球は誰のもの」(阪田寛夫作詞)という児童合唱曲が入っていますが、歌ってくれたのはひばり児童合唱団でした。今回のプログラムにも入っていますが、この曲は子供たちのいまのおとなに対するいわばプロテストソングで、「この青い地球は誰のものですか?」「将来の私たちやそのまた未来の子供たちのものですよ」と自然破壊や核戦争に対する不安をつのらせている大人たちをうったえています。自然がみずから破壊したものは時がたてば必ず修復します。しかし、人間が破壊してしまったものは人間が修復しなければなりません。
これからもなお世界へ向けてひばり児童合唱団が大きくはばたいていくことを願っています。60周年を心からお祝いするとともに、長年の皆川先生の一貫したひばり児童合唱団に対する情熱とご努力に敬服してやみません。
(ひばり児童合唱団「創立60周年記念公演」プログラムより)